Woman & Genderに関する、「おすすめの図書」を紹介します。是非読んでみてください。

【学生による文献紹介】

押山美知子『少女マンガ ジェンダー表象論』(2018 アルファベータブックス)

国際社会学科 1年

本書は、「リボンの騎士」「ベルサイユのばら」「少女革命ウテナ」などの少女漫画を通して、日本の少女漫画において、ジェンダーはどのように描写され、変容していったのかを「男装の少女」というヒロイン像を切り口として分析した一冊である。

一言で言えば、素晴らしい本だった。目の付け所の確かさと圧倒的な情報量、そして説得力に思わず引き込まれてしまう。人物の容姿に代表される絵画表現、登場人物のひとつひとつの言動、さらには物語の外に及び作者や編集部の意図、読者の感想など、様々な部分において人々のジェンダー観が反映されていることをひしひしと思い知らされた。

特に、分析の細かさ・鋭さには思わず舌を巻く。まつ毛の量、目の形、瞳のハイライト、髪、体形、といった人物の造形や、背景や効果(光、花など)、衣装やそれらに使われる色を漏らすところなく徹底的に分析し、「男女の差はどういう風に具現化され、表現されているのか」という事を踏まえた上で「女性主人公の性別越境はどのように表現されているのか」という事を導き出している。

この本の分析の中で特に重要なのは、タイトルにもある「男装の少女」というワードからも分かる通り、「性別越境」の部分だ。女性でありながら男性の格好をする、という特殊な状況が、マンガではどう表現されているのか。それが主題である。個人的には、「主人公は男性キャラクターと共にいる時は女性性が強調され、女性キャラクターと共にいる時は男性性が強調される」という分析が非常に興味深かった。ジェンダーは、相対化によって強調・表現されるものである、という分析をしている。「性別とは、ジェンダーとは何か」を深く考えさせられ、今後の勉強・研究の視野が広がったと感じた。

緻密な分析がなされ、的確な指摘と巧みな構成によってそれらが表現されている。ジェンダーについて学ぶ上で、非常に参考になる一冊であると共に、純粋に読書・学問の面白みを与えてくれると思う。小さい頃から様々なマンガに慣れ親しんできた私にとって、この本で取り上げられている作品はどれも見知ったものばかりであったが、この本によって、今まで気づかなかった新たな側面を発見することができた。新たな側面を発見することは学問の面白みのひとつであるように思うが、この本には、まさしくその「学問の面白み」を感じるのである。

 

【学生による文献紹介】

一橋大学社会学部佐藤文香ゼミ生一同(佐藤文香監修)『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた:あなたがあなたらしくいられるための29問』 (2019 明石書店)

国際社会学科4年

  本書はジェンダーをめぐる様々な問題について大学生が行った討論を基に、ホップ・ステップ・ジャンプという三段階に理解度を分けて解説が述べられている。

一般的に混同しやすいジェンダーとフェミニズムの定義であるが、本書ではジェンダー =ある性別を特定の役割に結び付けたり、男/女だから○○すべきと考えること、ある行動の原因をその人の性別に求めたりするような考え方であるとし、フェミニズム=男女同権と性差別のない社会を目指し、女性の社会的・政治的・経済地位の向上と性差別の払拭を主張するものとしている。

第一章ではジェンダーに関する素朴な疑問を中心とし、第二章では LGBT などのセクシュアル・マイノリティについて、第三章ではフェミニズムについて、第四章では社会での男性に対する差別(逆差別)について、そして第五章では性暴力について述べられている。   私が最も共感したのは第一章で述べられた「女子校」についてである。女子校ではセクシズムを経験しにくく、ジェンダートラックが形成されにくいと本書で述べられていた。私自身、高校・大学と女子校に通っていたため、その点では大いに共感できる部分があった。確かに女子校には男子の存在が無いことによる不公平さや男女による優劣を感じることはほとんどない。しかし、進路を決定する際には無意識のうちに家族の意向を気にする人が多く、社会で羽ばたく存在になることを目指す「エリート型」が一定数いる一方で、「良妻賢母型」の子も多いように感じた。私が通っていた学校は、小学校から高校までの一貫校で、自立した女性を育てることを理念に掲げていた学校であった。「エリート型」タイプの生徒が多いように感じたが、反対に学校として「良妻賢母」を強調してしまうと性別役割が再生産されてしまうことになると感じた。また、「エリート型」と「良妻賢母型」で二分化することについては、親から子どもへの影響も大きい。女子校では親の意向ではなく、本人が望む教育を受けられることが大切であり、個人の成績や意志に沿った進路選択ができる機会が提供されることが必要であると感じた。

私は本書を読んで「社会における女性本来の在り方」を学んだ。2019年の調査によると、共働き世帯は1245万世帯であるのに対し、専業主婦と雇用者からなる世帯は575万帯と約2倍であることが明らかになった(瀬地山 2020)。この数字から、「女性は家に入り家庭を守る」という性別役割分業は減少し、日本社会の在り方も着実に変化していると言えるだろう。過去の考え方に固執し、制度の変革などを行わない企業や人もまだまだ多く存在すると思うが、性別役割分業に縛られることなく一人一人が自由に生きられる未来が一刻も早く来ることを願っている。私自身も、「自分の未来は自分で掴む」という気持ちを強く持って生きていきたい。

引用文献 瀬地山角, 2020『炎上CMでよみとくジェンダー論』光文社.

 

【学生による文献紹介】

グレイソン・ペリー(小磯洋光訳)『男らしさの終焉』(2019 フィルムアート社)

                                                                                                                                                                              国際関係専攻4年

最初に、デフォルトマンの定義づけから本書は始まる。デフォルトマンとは、「白人」・「ミドルクラス」・「ヘテロセクシャル」という3つの要素を持った男性を指す。このように、デフォルトマンの定義である3つの要素を備え持っている男性は、今日のイギリスでは理想的な存在として考えられている。男性として生まれた場合、このような理想的な存在であるデフォルトマンに基づき育てられ、社会で評価される。そのため、育てられた本人はデフォルトマンに対して何の疑問も抱かない。

しかし、このような普遍的な考えこそが男性を苦しめる原因となっている。なお厄介なのが、自分が成長過程でデフォルトマンとは違う要素を持っているということに気づいた時だ。違う要素の例として挙げられているのが、女性であること・ゲイであること・愚かであること・黒人であることなどだ。これらは、人が持っていて何一つとしておかしい要素ではないが、デフォルトマンの理想とは異なるため自己嫌悪に陥ってしまう可能性を指摘している。

デフォルトマンは、社会に「普通」のフリをして根付いてしまったため、取り除くことが難しいと前置きされている。そのうえで、途中で男性に対して「自分のために腰を下ろせ」という話が出てくる。これは、デフォルトマンという服を身にまとっていても、実際に利益を得ている男性はほんの一部にしか過ぎない。そのため男性は腰を下ろすことによって、今以上に生きるのが楽になるのは間違いないという主張である。そして男性も今までのステレオタイプは捨て、弱い部分を含めたありのままの自分をさらけ出していくことこそが、新たな社会に繋がると述べている。

感想

今日、女性の社会進出が謳われている。そのため、社会に出てバリバリ働き自分の役割を持つ女性が増えてきた。その姿を見て、「女の人なのにすごい。」と感想を持つ人が多いように感じる。これは、女性がこのような社会になるように望み、働きかけを行なってきた結果であり、本当に誇るべきことだ。しかし一方の男性に目を向けて見てみると、女性とは違い、元々社会で働いている存在であった。このように男性という「性別」で生まれてきたというだけで、気づかぬうちに社会的枠組みに当てはめられてしまう。そのため、男性の未来に対しての議論が巻き起こることは少なかった。女性に焦点が当てられがちな現在、この本を読むことにより、男性も社会に苦しめられていることを理解する必要がある。

最後のページに、男性の権利として次のようなことが書かれている。「傷ついていい権利」「弱くなる権利」「間違える権利」「直感で動く権利」「わからないといえる権利」「気まぐれでいい権利」「柔軟でいる権利」「これらを恥ずかしがらない権利」。これは、男性に限らずどの性別にも言えることだ。多様性を認め、お互いに尊重しながら共存していくことが最も重要なことだと思う。

 

【学生による文献紹介】

チョ・ナムジュ(斎藤真理子訳)『82年生まれ、キム・ジヨン』(2016 筑摩書房)

                                                                                                                                                                           国際関係専攻4年

この本は、主人公であるキム・ジヨン氏が精神科で話した人生の話を医師が聞き、その話の内容を書いたカルテをもとに進行していく。キム・ジヨン氏の家族構成は、キム・ジヨン氏、夫のチョン・デヒョン氏、子供のチョン・ジウォンちゃんの3人家族である。チョン・ジウォンちゃんが産まれると、面倒を見なければならないためキム・ジヨン氏が仕事を退職した。納得して退職したのではなく、世間体的な理由とチョン・デヒョン氏の方が、稼ぎが多かったからという理由である。そのため、キム・ジヨン氏が1人で家事・育児の両方を行なっていた。するとある日、キム・ジヨン氏におかしな行動が見られた。そのおかしな行動とは、キム・ジヨン氏が他人に憑依したようにその人の口癖を真似して話すというものだった。またこの行動だけでは納まらず、その後もおかしな行動が続いた。それを心配したチョン・デヒョン氏は、精神科へ出向いて医師に相談した。医師にカウンセリングを受けるよう提案されたため、キム・ジヨン氏はカウンセリングを受けることになった。ここからキム・ジヨン氏の人生を5つの時代に区分し、物語が展開されていく。どの時代においても、女性であるがゆえ感じる憤りや違和感が描かれている。最後に、医師の妻の話が出てくる。医師の妻も、状況は違うがキム・ジヨン氏と同じような体験をしている。キム・ジヨン氏に、カウンセリングを受けることを勧めた医師でさえも、1番身近な自分の妻への理解が乏しい。これは今の社会の現状をうまく捉えている。

感想

この本では、女性であるから味わった大きな事件から日常の小さな事件まで、様々な事件が書かれている。中でも、印象的であった事件がある。キム・ジヨン氏が、バスの中で痴漢にあった事件だ。この事件の時、キム・ジヨン氏は結果的に2人に助けを求めた。1人目は、一緒のバスに乗っていた女性だ。この女性は、キム・ジヨン氏が直接声を出して助けを求めたわけではなく、異変に自ら気づき電話を貸してくれ、自分の最寄りではないバス停で一緒に降りてくれた。この一連の行動から分かることは、彼女自身も似たような体験をしてきたからこそ、今何をしてほしいかという気持ちを汲み取って行動できたということだ。2人目は、キム・ジヨン氏の父親である。女性にキム・ジヨン氏は電話を貸り、「ジヨンです バス停まで迎えに来て お願い。」と父親にメールを送った。父親はバス停まで迎えに来てくれたものの、事件に遭ったのはキム・ジヨン氏に非があったからだとひどく叱った。このように、1つの事件を通して男女の価値観の違いが見られる。この男女の価値観の違いは、韓国社会だけでなく今の日本の社会にも同じことが言える。しかし、世間的には名ばかりの女性進出が言われているため、おかしいことをおかしいと声に出して言えるような状況ではない。だからこそ、様々な人がまずこの1冊を読み自分とは違う立場の理解に努めるべきだと思う。

 

藤原一枝『さらわれた赤ちゃん - 児童虐待冤罪被害者たちが再び我が子を抱けるまで』(2019幻冬舎)

「揺さぶられっ子症候群」。この医学診断に科学的根拠があるのか。突然子どもから引き離された若い母親たちの深い悲しみが全ページに漂う。加害者とされる親たちの聞き取りやカルテ・医学意見書などから冤罪を訴える、小児脳神経外科の女性医師による渾身の1冊。

 

落合恵子 『21世紀家族へー家族の戦後体制の見かた・超え方[第四版]』(2019有斐閣)

「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業を前提とした「家族」のかたちが、戦前から現代までの歴史の中でいかにして形成されたかを読み解くことができる1冊です。写真や図表も多く、読みやすい本です。

 

筒井淳也 『仕事と家族ー日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(2015中央公論新社)

女性活躍が求められる時代となっても、なぜ日本では女性が活躍しづらく、出産と仕事の二択となるのか。アメリカやスウェーデン、ドイツとの国際比較をしながら、仕事と家族の関係について解き明かしてくれる1冊。

 

佐藤博樹・石田浩編『出会いと結婚』(2019勁草書房)

東京大学社会科学研究所が実施したパネル(追跡)調査の実証的分析に基づいた本。未婚化・少子化という課題に対して、家族形成と格差に着目し、政策・研究への発展的可能性を与えてくれる貴重な1冊。学生の皆さんの分析方法の勉強にもなります。

 

有賀美和子『現代フェミニズム理論の地平』(2000新曜社)

女性学研究所専任教員であった故有賀美和子氏が、本研究所で仕事をするなかで直面した、「女性学とは何か?」という問いかけ。そして実感した、適切な回答をしめすことの重要さと難しさ。
この「女性学とは何か?」という問いに対して、多様な「現代フェミニズム理論」の時系列・理論構造といった女性学の見取り図をわかりやすく呈示することで、問いに答えようと試みた一冊。

 

有賀美和子『フェミニズム正義論』(2011勁草書房)

人は皆、ケアを必要とする存在である。リベラリズムの普遍主義を問い直し、依存する他者に対し、柔軟に応じうる規範理論を構想する。「フェミニズム正義論」がめざす究極の目的は、従来のジェンダー規範や性別役割分業に縛られない自立的な男女の個々人を、それぞれの”多様な善の特殊構想”を追求する存在として、ひとしく尊重することにある。

 

結婚の比較文化

東京女子大学女性学研究所小檜山ルイ・北條文緒 編『結婚の比較文化』(2001勁草書房 )

様々な国(仏・英・米・日・韓・中)や時代の結婚を統計を基に紹介している。抽象的で未熟な若い女性たちの結婚観をゆさぶり、ジェンダー問題への糸口を提起する1冊。

 

 

親子関係のゆくえ東京女子大学女性学研究所有賀美和子・篠目清美 編『親子関係のゆくえ』(2004勁草書房) 

従来の性別役割分業にとらわれることなく、男性も女性も育児と仕事をそれぞれ担うことが、現在の生き難さからの開放につながる。

 

 

女性と美の比較文化東京女子大学女性学研究所・鳥越成代 編『女性と美の比較文化』(2008勁草書房)

「美」とは何か。
哲学、文化人類学、美術、舞踊、メディア論、健康・運動科学などのさまざまな視点から、多角的に考察する。

 

女性とライフキャリア東京女子大学女性学研究所・矢澤澄子・岡村清子 編『女性とライフキャリア』(2009勁草書房)

仕事中心のキャリアデザインから
人生中心のキャアデザインへ。
女性のライフコースと関連させつつ、多角的・総合的に検討する。

 

メディアとジェンダー東京女子大学女性学研究所・国広陽子 編『メディアとジェンダー』(2012勁草書房)

メディアは女性の味方なのか。
いちじるしく多様化し発展するメディア状況とジェンダーの今日的関係を多角的に描き出す。